老後の生活と読書記録
- 2020/02/28
- 10:27

新型コロナウイルス拡大防止対策で仕事が軒並みなくなった。
まあ朗読なんていうものは「娯楽」に毛の生えたようなものなので
なくてもいいのだ・・・と自虐的になることなどは決してしていない。
むしろ朗読のせいで病人がでたら朗読に恨みを持つ人が出てくるかもしれない。
そんなことになったら朗読がかわいそうだ!
朗読の仕事が一時的になくなっても朗読を守れるならいいのよ・・・という
朗読愛がいつも以上に過保護的に強まっているのが真実である。
ただ時期が悪い。
花粉が飛ぶこの時期とぴったり重なっている。
外に出られないのだ。
私は22歳で花粉症を発症してから今まで(現在50歳)
毎年必ずこの時期は非常に苦しむ。
アナウンサーになってからは仕事に支障がでないよう、1月末から事前薬
(発症をなるべく遅らせる)を飲み、発症すると点鼻薬と目薬とさらに強い
飲み薬をのみ、毎日家中掃除機をかけ、空気清浄機をターボにし、
四六時中マスクをしている。
ここまでしても花粉が1年ぶりに体に入るとちょっとしたショック状態に陥る。
体中がかゆくなりのどがいがいがして苦しくなり、微熱も出て
食事もとれず3キロくらいやせる(すぐ戻るが)
ビールがどうもよくなくて基本週5,6日禁酒状態となる。
辛い。(でもアル中ではないと実感できるので安心もする)
食材を買うだけに近所の歩いて5分のスーパーに行くのが精いっぱいなので
仕事がキャンセルになったのはある意味「ありがたい」ことでもある。
(節約はわりと得意なので出費を極力抑える。Amazonは開かない)
ただ、
暇 なのだ。
時間をもてあますのだ。
私は自分で言うものなんだがたいそう怠け者で、仕事大好き人間では
ない、と思っていた。宝くじさえ当たれば仕事なんてせず遊び惚けて過ごして
自堕落極まりない人間のクズのような、ごろごろ横になってワインを飲んでいる
ローマ人のような(ローマ人がクズだとは言っていない)生活をしてしまうと思っていた。
ただ、仕事が必要なのだ。仕事が好きだったのだ・・・。
出張が何より好き。人と朗読するのが本当に好き。
老後仕事なくてやっていけるのか・・・今回生まれて初めて不安になった。
そしてintrovertでありながら同時にアウトドア派だったのだー!
散歩やマラソンや美術館や映画館や観劇や図書館や本屋訪問が好き。
マラソン以降をアウトドアというのかはわからないけれど家の外に出ることが
とても好き。(人と約束をとりつけるのが面倒なので一人で出かけてしまいがちだけど)
こうして家の中にいると家事ぐらいしかすることがない。
私は家事が嫌いだ。
だからワーキングマザーをしているのかもしれない。
ワーキングマザーの特権は「いそがしくて家事まで手が回らない」と言っても許されることだ。(多分)
することがない。
老後仕事がなくなって足腰が悪くなったら私はどうなるんだろう。
そんなことを暇な昨日思っていた。
唯一インドアでも困らないアクティビティで大好きなものは「読書」である。
ということで本を読んだ。
ーーーー
川上弘美さんの「大きな鳥にさらわれないよう」(講談社文庫)
彼女の文章はいつも凛としていて冷静で優等生的で「女子校の憧れのお姉さま!」
的に愛しているのだが、この小説はなんかとても違っていた。
最初の章はいつも通りなんだけれど、読み進めるとファンタジー、神話、
SF、ディストピア、、、、わけわからん!
一つ一つの章は独立した短編のようなのに、すごくクレバーに前にでてきた登場人物がひょいひょい絡み合ってくる。
ここはどこ?
私はだれ?
愛って何?
死ぬって何?
生まれるって、生殖って文明って、宇宙って
人間って・・・何?
いつもの凛とした静かな文体のはずなのにドキドキ心が激しく動揺してしまう。
自分の過去と未来と今が一気に不安になる。
こんなに壮大なのに身近なストーリーって初めてだ。
読んだ後のため息の大きさと余韻が半端なくて
晩御飯の買い物にいけなかった。
日本語でこれを読めるということはなんと贅沢なことなのか。
日本語って素晴らしい。それを理解できる自分て幸せ者だー。
その嬉しさにも身もだえしてしまった。
数回登場する男女が川を下るというシーン(というか表現)
を読んでKazuo IshiguroのThe Buried Giantをふと思い出した。
こちらはもっとオトナのおとぎ話(切なくて読後がもっと苦しい「うそ・・・」という声が漏れてしまうような
感想だけど)なんだけど。
川上さんのこちらの作品は、
たとえ想像していない、たとえ理想とはいえない未来であっても
完全な絶望ではなくて
「何か」がその先にあるといううっすらとした希望めいたものが
あるような気がする。
女性と男性の差かしら(笑)
女性は強いんだよなんだかんだ言って。
岸本佐知子さんの解説も実に素晴らしい。
彼女、私のあこがれの女性。
さばさばしてて頭よくてスマートでウィットがあって文章うまくて本に詳しい。
ブックトークショーでの印象が忘れられない。
とにかくかっこいい。
ーーーー
20年もしたらきっと体の細胞が鈍りまくって(他の病気も出てくるだろうし)
花粉にはあまり反応しなくなるかもしれない。
読書できる視力だけはなんとか保って朗読をして、夫と散歩して、
カフェとかで静かに読書して数少ないお友達と飲みに行って
たまに旅行して美味しいもの食べたり温泉入ったりして過ごす。
そんな老後だといいな。
暇な今朝、昨日の花粉を念入りに掃除機で吸い込みながら考えた。
3月はしかし暇。
どうしたものか・・・
原稿仕事欲しい(笑)
皆様、健やかに、ハッピーにお過ごしください。
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